任意整理は債権者(借り入れ先)との和解交渉の結果、将来利息をカットした借金を原則3年間(36回払い)で返済していくものですが、任意整理後に一括返済することも可能です。
任意整理後の借金を一括返済する場合、債権者に一括返済する旨を伝えることで変更できますが、一括返済にはメリット、デメリットがあります。
このページでは任意整理した後に一括返済した場合のメリットやデメリットについて、知っておくべき情報を詳しくご説明いたします。
任意整理後でも一括返済することはできる
任意整理後に一括返済は可能です。
債権者(借り入れ先)からすれば、一括で返済してもらうことにデメリットはなく、任意整理の和解交渉で決められた完済予定日よりも早く借金を回収できるため、一括返済を断られる可能性はまずありません。
一括返済によるデメリットが生じる可能性があるのは債務者(借り手側)側であり、一括返済には慎重に対応すべきでしょう。
一括返済に支払い方法を変更するには
一括返済への変更ですが、ご自身で債権者(借り入れ先)に対し返済している場合は、債権者へ連絡し、変更手続きします。変更後、債権者から指定される金融機関口座へ振り込み、返済します。
任意整理を専門家(弁護士等)に依頼しており、借金の返済も代行している場合は、専門家に一括返済したい旨を伝え、専門家から債権者へ返済方法の変更を依頼します。
一括返済については専門家とよく相談してから、変更の手続きを行いましょう。
繰り上げ返済も可能
一括返済だけでなく、繰り上げ返済も可能です。繰り上げ返済を希望する場合も一括返済と同様、債権者へ連絡し手続きを行います。
一括返済、繰り上げ返済へ変更をご希望の場合、一括返済によるメリット、デメリットをお伝えしています。また一括返済しても問題はないか、返済後のことも伺いながら手続きをご案内しております。
任意整理後に一括返済するメリット・デメリット
任意整理後に一括返済することで生じるメリット、デメリットを見ていきましょう。
一括返済するメリット
- 借金返済のストレスから解放される
- 毎月の支出を減らすことができる
- 一括返済することで借金を減額してもらえる場合がある
- 信用情報の回復が早くなる場合がある
任意整理は借金を減額できるとはいえ、返済は残ります。原則、毎月返済していきますが、返済することにストレスを感じていた方であれば、一括返済することでストレスから解放され、精神的な負担も減らすことができます。
一括返済することで借金から解放され、心機一転、様々なことが好転された方もいらっしゃいます。
任意整理後は減額された借金を原則3年間(~5年)(36回払い)で毎月返済していきます。一括返済することで毎月の返済がなくなるため、毎月の支出を減らすことができます。
一括返済は大きな支出となりますが、毎月の返済が3年間続くことにストレスを感じる方や、手元にお金があると使ってしまう方は浪費も防ぐことができると、一括返済される方もいらっしゃいます。
債権者(借り入れ先)との交渉次第ですが、一括返済することで借金を減額してもらえる場合があります。
ただし、任意整理で既に減額されるべき将来利息は減額されているため、債権者側としては減額するメリットがありません。任意整理後の一括返済で減額される可能性は低いと考えましょう。
任意整理することで信用情報に傷が付きます。これは任意整理した情報が一定期間、信用情報機関で保管されている信用情報に登録されるためです。
信用情報に登録される任意整理した情報は手続き開始後、もしくは任意整理後、減額された借金を完済した後のいずれかで登録されます。
登録された情報は信用情報機関(CIC、JICC等)で最低5年間登録されますが、借金完済後に登録される場合であれば、一括返済することで完済時期が早まるため、信用情報から任意整理した情報が抹消され、回復するまで早くなる可能性があります。
しかし、信用情報機関に保管されている情報は全て共有されているため、全ての信用情報機関から任意整理したと考えられる情報が削除されなければ、信用情報が回復したとは言えません。
一括返済するデメリット
- 減額されない場合、返済総額は変わらない
- 一括返済後の生活に支障をきたす場合がある
- 一括返済しても信用情報はすぐに回復しない場合がある
一括返済することを条件に債権者と交渉しても減額されなかった場合、一括返済しても返済総額は変わりません。
一括返済後の生活でまとまったお金が必要な場合でも、任意整理後はカードローン等でお金を借りることもできません。
もしものことを考え、一括返済できるお金があれば返済するのではなく、貯蓄に回すことも検討すべきでしょう。
先ほど一括返済することで信用情報の回復が早くなる可能性があるとお伝えしましたが、信用情報から任意整理した情報が削除されるかは、信用情報機関に会員登録している債権者が情報更新しなければ削除されないため、信用情報は回復しない可能性があります。
一括返済が必ずしも信用情報の回復に繋がるとは言えません。
任意整理後の一括返済で注意すべきこと
任意整理後の一括返済で注意すべきことは、任意整理後に自己破産や個人再生に切り替えた場合に生じる問題や、期限の利益を喪失してしまう場合があることです。
自己破産に切り替えた時に偏頗弁済とみなされる場合がある
複数の債権者(借り入れ先)を任意整理していた場合、全ての債権者に対し一括返済するのであれば問題ありませんが、特定の債権者のみ一括返済する場合は偏頗弁済(へんぱべんさい)とみなされる場合があります。
偏頗弁済とみなされることで自己破産に切り替えても、免責不許可自由に該当する可能性があり、自己破産できない場合があります。これは破産法252条第1項3号(免責許可の決定の要件等)に該当します。
特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
引用元:e-Gov
任意整理後に一括返済するのであれば、特定の債権者ではなく、全ての債権者に返済することをお伝えしています。
個人再生に切り替えた際、減額効果に影響や不認可となる場合がある
個人再生の場合は偏頗弁済することで、個人再生による借金の減額効果が低くなる場合や不認可となる(個人再生で借金を減額できない)場合があります。
例えば、借金総額が300万円の場合、個人再生することで100万円まで借金を減額できる可能性があります。
借金総額 | 個人再生後に残る借金 |
---|---|
100万円未満 | 借金の全額 |
100万円~500万円以下 | 100万円 |
500万円~1,500万円以下 | 借金総額の5分の1 |
1,500万円~3,000万円以下 | 300万円 |
3,000万円~5,000万円未満 | 借金総額の10分の1 |
しかし特定の債権者に一括返済で150万円支払った(偏頗弁済した)場合、精算価値保障の原則から、150万円までしか減額されない場合があります(結果的に返済額が50万円増える可能性があります)。
また偏頗弁済した金額を隠して手続きした場合、個人再生が不認可となる可能性もあります。
一括返済に変更することで期限の利益を喪失する
任意整理後の返済において、債権者から一括返済や返済期日前に返済を要求されることはありません。
しかし、一括返済に切り替えると期限の利益を喪失してしまうため、和解交渉で決められた返済回数や返済期日で返済することはできなくなります。
確実に一括返済できる場合であれば問題ありませんが、一括返済しようか迷っている状況であれば、一括返済の手続きは慎重に検討しましょう。
まとめ
任意整理後に一括返済することは可能です。一括返済を希望する場合は債権者に一括返済する旨を伝えることで対応してくれます。返済は指定される金融機関口座へ振り込み等で行います。
任意整理を専門家に依頼しており、返済も代行してもらっている場合は、専門家を通じて手続きを行います。
ただし、任意整理後の一括返済にはメリット、デメリットがあるため、慎重に判断することをお伝えしています。
任意整理後に一括返済するメリットでいえば、減額される可能性や信用情報の回復が早くなる可能性はゼロではありませんが、借金から解放されたいと考える方以外、ほぼありません。
デメリットでいえば、一括返済しても返済総額は変わらないことや、まとまったお金が手元からなくなることによるリスク、信用情報の早期回復が見込めない可能性があることです。
また、もし任意整理から個人再生や自己破産等に切り替えする場合、問題が生じる可能性もあります。
任意整理後の一括返済は専門家に相談しながらメリット、デメリット、生じる問題がないかを把握してから行うようお伝えしています。