「家や車を手放さずに、借金の返済月額を減らしたい」
「保証人の親に迷惑をかけずに借金を債務整理したい」
債務整理でも、このような形で進めたいと考えている債務者は、意外に多いのではないでしょうか?
それにピッタリの債務整理が、推定で毎年200万人もの債務者が利用している「任意整理」です。
ここでは、任意整理のメリットやデメリットについて、詳細な解説とともに、任意整理の手続きの概要について紹介します。
債務整理や任意整理手続きを具体的に検討する際の、参考情報として活用ください。
任意整理とは?
「借金の返済に苦しんでいる人を、借金の減額や返済猶予などで解放する手続き」を債務整理と言い、一般的には、自己破産・個人再生・任意整理の3種類に分類されます。
この債務整理の手続きの中で、最も多くの債務者から利用されている手続きが「任意整理」です。
ここでは、この任意整理がどのような手続きかを紹介します。
任意整理とは利息の支払い免除で返済の苦労から解放する手続き
そもそも任意整理とは、「裁判所を通さずに弁護士や司法書士などの債務者の代理人が債権者と交渉し、利息の免除を実現することで、毎月の返済負担を軽減できる可能性があります。
要約すると、「毎月の返済から引かれている利息を無くし、完済できるようにする手続き」と言えます。
任意整理は驚くほど多くの債務者に利用されている債務整理の手続きの1つで、「全ての借金ではなく、一部の債務だけを選んだ整理もできる手続き」です。
委任を受けた弁護士や司法書士は、手続きを開始してすぐ、債務者の「取引履歴」の開示を債権者に求めます。
その取引履歴を精査し、『利息制限法』に定める上限金利を超える金利で、利息を返済したケースの有無を確認するのです。
これを「利息制限法による引き直し計算」と言い、上限金利を超える金利で支払った利息は「過払い金」として返還を受け、元金の返済に充当します。
この手続きが、テレビCMなどで多くの人に知られることになった「過払い金返還請求」の手続きです。
任意整理の手続きは裁判所を介さないことから、弁護士や司法書士などに委任しないで債務者自身でも行えます。
しかし、債務者自身で任意整理をするケースでは、ほとんどの債権者が相手にしてくれないばかりか、取立てや督促の停止も実現しません。
また、交渉に応じてもらえても、交渉の素人である債務者と交渉のプロである債権者の話し合いでは、債務者が求めるような和解は期待できないのが現実です。
そうしたことから、任意整理の手続きは弁護士や司法書士などの法律や交渉の専門家に委任するのが一般的です。
費用はかかりますが、和解が成立するまで取立てや督促は停止され、専門家が債権者と直接交渉することで過払い金の返還請求を含め、債務者が求める和解が期待できます。
任意整理の手続きで元金は減額されない
任意整理をすることによって、借金の元金はどのくらい減額されるのでしょう。
この問に対しては、「原則として、元金そのものは減額されません」というのが答えです。
手続きを委任された弁護士や司法書士は、下記の4つについて債権者と交渉します。
- 元金の減額
- 将来利息(現在および将来支払う予定の利息)の支払い免除
- 経過利息(交渉期間中に発生する利息)の支払い免除
- 遅延損害金(支払いが遅れた場合にペナルティーとして支払う利息)の支払い免除
1.の元金減額の可能性はほぼないのですが、一部の債権者の中には、一括返済をすることを条件に元金の減額を認める場合があります。
2.から4.の3つは、本来であれば返済すべき利息であり、元金ではないことから、交渉にあたる債務者の代理人の交渉力で免除されるのかが決まると言えるでしょう。
なお、任意整理の手続きの一環として行う引き直し計算で明らかになった過払い金は、過去の過払い利息です。
しかし、この過払い金は、返還を受けるのではなく元金に充当します。
元金に充当することで元金残高を減額し、債務者の無理のない返済計画策定につなげるのです。
任意整理の条件と任意整理に向いている人と向いていない人
ここでは、任意整理をする際に「満たしておかなければならない条件」と、「任意整理に向いている人と向いていない人」について紹介します。
任意整理をするには一定の要件を満たすことが必要
任意整理をする際には、借金の理由や金額が問われることはありません。
しかし、だれでもができるわけではなく、債権者が任意整理に応じてくれることが必要です。
任意整理に応じるうえで、債権者が債務者に求める要件としては、一般的には以下に解説する3点と言われています。
安定した収入が見込めること
任意整理で借金返済の負担は軽くなっても、減額後も借金の残額を返済しなければなりません。
したがって、任意整理をするには整理後に、返済に充てるだけの安定した収入が債務者に見込めることが必要です。
アルバイトや主婦であっても、返済に充てられる程度に、安定した収入がある債務者の任意整理は可能ですが、無職や無収入の状態が続いていて、家族の援助なども見込めない債務者の任意整理は困難と言えます。
必ず完済するとの意志が示されていること
過払い金が発生していないケースでは、原則として任意整理で元金が減額されることはありません。
そうした任意整理において、将来利息・経過利息・遅延損害金などの支払い免除の和解を債権者から得るためには、安定した収入が見込めることを示すだけでは不十分です。
交渉を通じて、完済するという強い意志があることを、債務者がしっかりと示す必要があります。
原則として3~5年で完済が見込めること
借金の返済期間は5年を超えると和解を得ることが難しいため、任意整理では3~5年(36~60回)の分割払いで完済が見込めることが条件です。
毎月の収入から生活費を差し引いた残金で借金返済を続けられることがポイントで、それができることを証明できれば、債権者との和解は成立すると言えるでしょう。
任意整理に向いている人と向いていない人
「向いている人と向いていない人」と表現すると性格面のようですが、そうではなく、ここでは借金の状況が任意整理に「適した状況や適していない状況の人」について解説します。
一般的に言われている任意整理に「適した状況の人」と「適さない状況の人」を列挙して紹介致します。あなたの借金状況の判断にぜひ利用してみてください。
任意整理に「適した状況の人」 | 任意整理に「適さない状況の人」 |
---|---|
・借金額がそれほど多くない人 ・特定の債権者からの借金を整理したい人 ・長期間にわたり返済を続けている人 ・返済に充当するための安定した収入のある人 ・安定収入があり返済額の減額によって返済できる人 ・費用と手間をかけたくない人 ・所有している多くの財産を残したい人 ・ローン返済中のマイカーを残したい人 ・保証人つきの借金がある人 | ・借金額が多過ぎる人 ・手続き後の返済を遂行するだけの返済能力がない人 ・これから生活保護を受給したい人 ・話合いに応じてくれない債権者がいる人 ・現在、「差押え」を受けている人 ・現在、生活保護を受給している人 |
任意整理の費用と手続きの流れ
ここでは、「任意整理の費用」の目安と、一般的な「任意整理手続きの具体的な流れ」について紹介します。
任意整理の費用の目安
任意整理を弁護士や司法書士に委任した場合、はたしてどの程度の費用が必要なのでしょう。
債権者1社当たりの着手金と基本報酬は、手続きを委任された弁護士や司法書士、また事務所によってさまざまです。
ここではネット上に公表されている情報を参考に、任意整理に必要な費用を費目別に見てみましょう。
費 目 | 内 容 | 費用(目安) |
---|---|---|
相談料 | 正式に委任する前の法律相談で、近年は無料が多い。 | 0円~1万円 |
着手金 | 正式に委任したときに支払う費用で、委任契約後に支払う。 任意整理を行う債権者数で料金設定している事務所が多い。 | 1社当たり3〜6万円 |
基本報酬 | 結果の成功の程度に応じて、債権者1社当たりで発生 | 1社当たり1万円〜 |
過払い金返還成功報酬 | 過払い金を回収できた場合に支払う成功報酬 | 戻った分の20% |
減額成功報酬 | 借金が減額したことに対する報酬 | 減額分の10%程度 |
その他実費 | 手続きをすすめる際に必要な交通費、通信費、コピー代など (請求される場合と請求されない場合がある)。 | 実費 |
弁護士や司法書士の費用の支払いについては、近頃は分割払いを認める事務所が増えています。
また、費目それぞれの料金も債務者の状況を考慮して柔軟に運用されているようなので、委任する弁護士や司法書士に相談してみてはいかがでしょう。
任意整理手続きの具体的な流れ
ここでは、任意整理における一般的な手続きの流れを紹介します。
手続きの流れは固定的なものではないことから、あくまでも1つのパターンと受け止めてください。
- 無料相談
債務整理の法律相談は、大半の法律事務所などでは無料で行われています。
- 委任契約
弁護士などに委任することになった場合は、「委任契約」を締結します。
- 受任通知の送付・取引履歴の開示請求
債権者に対して受任通知を送付(これで債権者からの督促や取立てが停止される)
受任通知の送付とともに、「取引履歴開示請求」も行われます。
- 引き直し計算・債務の確定
取引履歴をもとにして引き直し計算をし、任意整理を開始時点での正確な借金の額を確定します。
- 弁済金の積立て開始
弁済金とは返済がストップしている期間の積立金で、それを弁護士報酬に充てます。
- 過払い金返還請求
過払い金が発生していた場合は、当該債権者に対して過払い金の返還請求をします。
- 和解案の作成・送付
任意整理における返済条件を定める和解案を作成し、各債権者に送付します。
- 債権者との交渉
作成・送付した和解案をもとに、各債権者と交渉します。
- 特定調停
交渉があまりにうまくいかない場合は、裁判所の「特定調停手続き」を利用する場合もあります。
- ラベル和解契約の締結
債権者との間で話がついた場合は、和解契約を締結します。
- ラベル和解に基づく返済
和解契約が成立したら、その和解契約の内容に基づいて返済をしていきます。
任意整理をすることのメリットを詳しく解説
債務整理の中で、裁判所を通さずに弁護士や司法書士に任すことで借金を減らせるのは、任意整理だけです。
費用が低額であるうえに、資料などを準備したり裁判所に出向いたりする手間もかからないことから、圧倒的に多くの債務者から利用されています。
ここでは、任意整理の代表的なメリットを7つ取り上げて解説しましょう。
取り立てや催促が止まる
「取り立てや催促が止まる」という事実は、任意整理を弁護士や司法書士に委任した債務者が、最初に実感できる任意整理のメリットと言えるでしょう。
借金の返済が滞ったときに悩まされるのが、債権者からの催促や督促、電話や郵送による取立てです。
しかし、弁護士や司法書士に任意整理を委任すると、債権者からの取立てや催促はすぐに止まります。
債務者が自分で任意整理の手続きを行う場合は、債権者に連絡や通知をしても取立てや催促は止まりません。
弁護士や司法書士は、債務者から任意整理の手続きを委任されると、債権者にFAXや郵便で「受任通知」を送ります。
受任通知とは、委任された弁護士や司法書士が、「私が代理人として任意整理手続きを行う」ということを債権者に知らせる通知です。
債権者は通知を受け取ると、それ以降に債務者へ直接連絡することを法律で禁じられているので、借金の取立てや督促が止まります。
利息の支払いが免除され元金だけの返済になる
「任意整理は、返済を元金だけに抑えられる可能性のある債務整理」とも言われ、元金の減額よりも利息(遅延損害金を含む)の免除を求める手続きです。
そのことから、債権者と債務者の間では、主に次の3つの利息の処理について交渉が行われます。
- 経過利息(債務整理期間中に発生する利息)の支払い免除
- 将来利息(現在および将来支払う予定の利息)の支払い免除
- 遅延損害金(支払いが遅れた場合にペナルティーとして支払う利息)の支払い免除
任意整理は和解が必要な交渉なので、これら3つの利息がすべて支払いを免除されるとは限りません。
しかし、債務者に自己破産などをされると、債権者は元金さえ回収できなくなってしまいます。
そうした債権者側の都合もあり、弁護士や司法書士が交渉を行う場合は、将来利息の支払いを免除して元金だけ返済することで和解に応じることが多いようです。
返済スケジュールの見直しで月々の返済額が減額される
任意整理での交渉では、何をいくら削減するかの和解とともに、再開する時点での元金を何年程度で完済するかの和解もしなければなりません。
任意整理後の返済期間については「原則3年間(36回)で最長5年間(60回)」が認められており、債務者は月々の返済額を考慮しながら返済期間を提案します。
この3~5年の期間が設定されているのは、あまり長期間であれば債権者と和解できないことと、これだけの期間であれば返済できなくなるよう大きな環境変化が発生する可能性が低いと考えられるからです。
ただし、5年以上の返済期間が残っているケースでは、任意整理後は最長5年での返済になることから、月々の返済が減額されない可能性があります。
任意整理では家族や職場の同僚などにバレにくい
任意整理では、一般的には弁護士や司法書士が債務者の窓口となり、債権者とのやり取りをします。
そのことで、債務者本人が話をしなければ任意整理は家族や職場の同僚などに知られずに完済を目指せるので、これは任意整理の大きなメリットの1つです。
とはいえ、次のような場合には、任意整理をしていることが高い確率で知られてしまいます。
- 手続きに関係する書類などを家族や職場の同僚などに見られた場合
- 裁判所や委任した弁護士などからの郵便物を家族や職場の同僚などに見られた場合
こうしたことで家族や職場の同僚などに知られずに任意整理をするには、次の2点の厳守が必要です。
- 弁護士や司法書士に「家族や職場にバレないように手続きをしてほしい」と伝えておく
- 弁護士や司法書士(事務所)からの郵便物は、個人名で送ってもらうか局留めにしてもらう
なお、保証人を立てている借金や勤務先からの借金が原因で家族や職場の同僚などにバレる可能性があることから、そうした借金は任意整理の対象外にすることが必要です。
任意整理の対象外にすれば守れる財産がある
自己破産や個人再生などの法的な手続きで債務整理をする場合は、債務の一部だけを整理するといったことは原則としてできません。
これは、法的な債務整理には、債務者だけではなく債権者の利益を守る「債権者平等の原則」の視点も含まれているからです。
この債権者平等の原則とは、複数の債権者がいる場合、借金の時期や順番などに関係なく、どの債権者も債権額に応じて平等に債務者から返済を受ける権利を言います。
もし、特定の債権者だけが返済を受けることを認めると債権者平等の原則に反することから、債務者が一部の債務だけ整理の対象にすることは認められないのです。
しかし、裁判所を介さない任意整理の場合は、一部の債権だけを対象にすることが認められており、ローン返済中の住宅や車のなどを手放さずに手続きを進められます。
保証人のある借金は除外すれば影響は出ない
債務整理をするかについて悩んでいる人のうち、債務整理をすることで保証人に迷惑をかけることを心配しているケースが多いです。
もし、保証人を立てている借金を任意整理すると、借金の一括返済を求める請求が間違いなく保証人に届きます。
しかし、任意整理では整理の対象にする債務を選べることから、保証人を立てた借金を任意整理の対象外とすることによって、保証人への影響を心配する必要がありません。
個人再生や自己破産ではできない「債務の一部だけを整理できる」のは、任意整理の特徴的なメリットと言えます。
遅延損害金もカットできる可能性がある
すでに返済を滞納している場合は、損害賠償金である「遅延損害金」が発生している可能性があります。
遅延損害金は延滞利息とも呼ばれ、支払日までに返済できなかったペナルティーとして課せられるものです。
延滞損害金の金利は貸出金利の最大1.46倍まで認められていることから、一般的には『利息制限法』で認める20%の高金利で設定されています。
『将来利息などが免除され元金だけの返済になる』の記事で紹介したとおり、任意整理をすることで将来利息や経過利息と同様に、遅延損害金の免除を交渉できるのです。
ただし、滞納期間が1年以上といった長期に及ぶ場合は、債務者側にカットを断られる可能性があるので、遅延損害金発生前の任意整理への着手をおすすめします。
任意整理をすることのデメリットを詳しく解説
債務整理の手続き方法は2つあり、裁判所を通じて行う法的整理と裁判所を通さずに行う私的整理です。
ここで取り扱う任意整理は、債務整理のなかでは唯一、裁判所を通さずに行う私的整理に分類されます。
任意整理は、毎年数百万人もの利用者がいると推定されるほどメリットのある債務整理ですが、決してデメリットがないわけではありません。
ここでは、すでに紹介したメリットに続き、任意整理の代表的なデメリットを7つ取り上げて解説します。
ブラックリストに載る
「ブラックリストに載る」とは、個人信用情報機関のデータベースに「金融事故」の情報が登録されている状態のことです。
金融事故とは借金の返済に関連した契約違反などの行為のことで、具体的には「長期延滞・代位弁済・強制解約」のほか「債務整理」が該当します。
ブラックリストに載ることが任意整理の最大のデメリットといわれるのは、そのことで借金やクレカ(クレジットカード)に関して次のような制限を受けるからです。
- 新たな借金ができなくなる:あらゆる銀行や消費者金融などの、ローンの審査に通らなくなる
- クレカを使えなくなる:手持ちクレカは利用できなくなり、新規申込みの審査に通らなくなる
債務整理をしたことでブラックリストに載っている期間は、日本に3つある個人信用情報機関で次の表のとおり運用されています。
債務整理 | 全銀協KSC | 日本信用情報機構JICC | シーアイシーCIC |
---|---|---|---|
任意整理 | 5年 | 5年 | 5年 |
個人再生 | 10年 | 5年 | 5年 |
自己破産 | 10年 | 5年 | 5年 |
クレカを使えない
これは、「ブラックリストに載る」ことで受ける規制の1つです。
カード会社(クレジットカード会社)などは金融機関と同じように、利用者の信用情報を重視することから、ブラックリストに載った利用者はクレカを利用できなくなります。
また、新たなクレカの申込みをしても、ブラックリストに載っている5年間は審査を通りません。
では、クレカを整理対象から外して任意整理をした場合、このクレカはどうなるのでしょう。
「ある程度の期間は利用できる可能性はありますが、使い続けることはできません」というのが答えです。
これは、カード会社が審査時や利用状況の定期点検として行っている「途上与信」に関係があります。
途上与信は、カード会社が「個人信用情報機関へ利用者の信用情報を問い合わせる手続き」です。
任意整理の対象から外したカード会社では、この途上与信で利用者の任意整理を知ることになり、その時点でカードは利用できなくなる可能性があります。
ローンを組めない
これも、「ブラックリストに載る」ことで受ける規制の1つです。
任意整理をした人は、ブラックリストに載っている5年間は、新規のローンを組めません。
巷では、住宅や車のローンを配偶者名義で申し込むことが紹介されており、ヤミ金業者による「ブラックリスト経験者へも融資!」といった広告なども氾濫しています。
しかし、ブラックリストから削除されるまでの期間は、新たなローンを組むのではなく、借金完済に務め、余裕資金は積極的に貯蓄に充てるべきでしょう。
なお、ブラックリストから削除された後にローンを組む場合には、任意整理の際に債権者であった金融機関を選ばないよう注意してください。
ブラックリストから削除されても、金融機関内部のデータベースには事故情報が残っている可能性が高いので、ローンを申し込んでも審査を通るのは難しいのです。
保証人になれない
この「保証人になれない」というデメリットも、「ブラックリストに載る」ことで受ける規制の1つです。
任意整理をしてブラックリストに載ると、原則として他人の借入れの保証人や連帯保証人になれません。
ローンの契約をする際、債権者は債務者だけではなく、保証人や連帯保証人の信用情報を個人信用情報機関に照会するのです。
保証人になろうとする人が過去5年以内に任意整理の事実がある場合、個人信用情報機関のデータベースに金融事故の情報が登録されています。
したがって、そうした人は不適格者と判断されることから、保証人や連帯保証人にはなれません。
ただしアパートやマンションなどで、家賃の引落しにクレカを使用しない賃貸契約を結ぶようなケースでは、連帯保証人になる可能性があります。
任意整理をしても借金の支払い義務は残る
任意整理は借金が帳消しになる手続きではないので、任意整理後も借金の返済義務はなくなりません。
任意整理は「借金を元金だけの返済に抑えられる債務整理」とも言われるように、元金ではなく「利息(遅延損害金を含む)を免除してもらう手続き」なのです。
任意整理をすることで従前よりは返済が楽になる可能性がありますが、任意整理後も返済を続ける手続きなので、返済できるだけの安定収入が見込めない債務者は利用できません。
なお、非常にまれなことですが、高額な過払い金があった場合は、借金の返済義務がなくなるケースがあります。
それは、次の例のように過払い金の額が元金残額よりも多い場合です。
- 手続き開始時点の元金残額が50万円
- 過払い金が60万円
- 過払い金の50万円を元金返済に充当し、10万円は債務者に返金
この結果、借金の返済義務がなくなります。
債権者に交渉に応じてもらえない可能性がある
自己破産や個人再生は裁判所が関与する手続きなので、相手に対する強制力がありますが、任意整理は裁判所を介さない任意の交渉であるため、相手に対する強制力はありません。
そのため、借入れ先である債権者が交渉に応じてくれないのであれば、任意整理をすることさえできないのです。
債務者自身が交渉にあたる場合、任意整理の交渉に応じてくれない債権者は多数存在します。
また、たとえ任意整理に応じてくれる業者でも、分割回数を制限や利息を付けなければ和解してくれないといった債権者も存在しているのが現実です。
そのため、任意整理を諦めなければならなくなるといった事態さえ生じることもあります。
減額できない可能性もある
任意整理は裁判所を介さないことから、和解はすべて債権者と債務者の交渉によって決定される手続きです。
交渉では互いに譲歩することが必要な場合もあることから、必ずしも希望通りの減額ができない可能性もあります。
任意整理においては、過払い金が発生していなければ、借金の元金を減額してもらうことはまず困難です。
近年は、たいていの債権者が利息制限法に定める金利で取引をしているため、過払い金の発生はほぼありません。
そのため、任意整理の場合には、そもそも借金が全額免責される自己破産はもちろんのこと、個人再生よりも返済金額が相当高額になるというデメリットがあります。
返済額があまりに減額される見込みがない場合は、自己破産や個人再生を検討する必要があるでしょう。