自己破産を隠して結婚しても、結婚相手には直接的に影響することはありません。
ただし、自己破産を隠して結婚したものの、結婚後に発覚したことで夫婦間の信頼関係が築けなくなった方もいらっしゃいますし、自己破産していることで生じるデメリットもあるっため、結婚前に自己破産していたことは打ち明けるようお伝えしています。
このページでは自己破産を隠して結婚した場合、どのような影響やデメリットが生じるのか?結婚する前に自己破産したことを打ち明けたほうが良い理由など、詳しくご説明いたします。
自己破産していても結婚はできる
自己破産していても結婚してはいけないといった制限はありません。
自己破産は借金を免責にする(借金を帳消しにする)ための法的手続きであり、債権者(貸し手側)と保証会社(保証人等)、そして債務者(借り手)に影響があるだけです。
結婚相手に直接的に影響はしませんが、自己破産していることを隠して結婚しても、後々に発覚した時のデメリットやリスクを考えれば、結婚前に自己破産していたことを打ち明けておくべきでしょう。
では、どのような時に自己破産していたことが発覚してしまうのか?ケースを見てみましょう。
自己破産していることが結婚相手に知られてしまうケース
自己破産していることが結婚相手に知られてしまうケースは以下の場合です。
- 官報を見られる
- 自己破産の手続きをしていた時の書類等を見られてしまう
- ローンが組めないことから怪しまれる
自己破産すると「官報」に掲載されます。官報とは国の新聞のようなものであり、誰でも閲覧できるため、自己破産していたことが発覚する可能性があります。
官報を閲覧される可能性は低いとはいえ、インターネット版官報もありますので、知られるリスクとして懸念されます。
インターネット版官報:https://kanpou.npb.go.jp
自己破産の手続きをしていた際の書類を見られてしまうことで知られてしまった方もいらっしゃいます。
例えば、引越しの時に書類を入れていた段ボールを見られた、実家に帰省した際に見られ、自己破産した事実が発覚するケース等です。
自己破産している方の場合、一定期間はローンを利用できません。住宅ローンはもちろん、マイカーローン、ショッピングローン(分割払い)など、ローン全般が利用できません。
またローンだけでなく、クレジットカードも一定期間は利用できなくなります。ローンやクレジットカードが利用できないことから怪しまれ、自己破産が発覚するケースです。後ほど詳しくご説明いたします。
自己破産しても影響しないこと
自己破産しても影響しないこともあります。
では、自己破産することで影響があるのでは?と不安に思われご質問される項目の中で、自己破産しても影響しない事柄を挙げてみます。
- 選挙権は失わない
- パスポートは取得できる
- 生命保険等に加入できる
- 戸籍や住民票、マイナンバーカードには記録されない
- 生活保護も受給できる
いずれも自己破産しても影響はありません。
自己破産による影響、ご不安、ご不明なことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。そうや法律事務所では、無料相談を行なっております。
管財事件となった場合は海外旅行や引っ越しはできない場合がある
パスポートは取得できますが、自己破産で管財事件となった場合、手続き中は海外旅行が制限される可能性があります。これは破産法第37条に定められています。
破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。
引用元:e-Gov
自己破産には同時廃止と管財事件があり、先ほどお伝えした処分できる財産(持ち家他、高額な財産等)がある場合は管財事件となります。
同時廃止の場合は旅行や引っ越しの制限はありません。
自己破産している場合に結婚後の生じる問題とは
自己破産した方に生じるリスクは先ほどお伝えした官報に掲載される以外にもあり、結婚後の生活に問題が生じる可能性があります。
- 20万円以上の財産や99万円以上の現金は失ってしまう
- 一定期間、ローンやクレジットカードが利用できない
- 保証人・連帯保証人になれない場合がある
- 資格制限により一定期間、仕事に就けない場合がある
20万円以上の財産や99万円以上の現金は失ってしまう
自己破産で免責許可がでれば、返済は免除(借金が帳消し)されますが、20万円以上の財産や99万円以上の現金は失います。
例えば、持ち家や車などの他、売却した際に20万円以上の価値がある高額な財産、20万円以上の預貯金も差し押さえの対象となります。
一定期間、ローンやクレジットカードが利用できない
自己破産した後は一定期間、ローンやクレジットカードが利用できなくなります。
例えば、住宅ローン、マイカーローン、ショッピングローン(分割払い)、学資ローンなどは利用できなくなります。
クレジットカードも同様に作れなくなりますし、所有しているクレジットカードも使えなくなります。
結婚後の生活を考えるとローンやクレジットカードが利用できないことは不便であること以上に、家族から不信感を抱かれる可能性もあります。
保証人・連帯保証人になれない場合がある
保証人や連帯保証人は、ローン等の契約者が返済できなくなった場合、代わりに返済しなければならないため、保証人や連帯保証人となれる方は返済能力があることが条件となります。
保証人や連帯保証人にも審査が必要であり、審査においては信用情報機関の信用情報等から返済能力があるか?判断されます。
もし自己破産している場合であれば、返済能力がないと判断される可能性があるため、保証人や連帯保証人として認められない場合があります。
資格制限により一定期間、仕事に就けない場合がある
自己破産の手続き中は資格制限がかかるため、資格を要する仕事をしている方は就労できなくなる場合があります。
資格制限がかかる代表的な業種でいえば、弁護士や司法書士、警備員です。
自己破産が子供に迷惑をかけることってある?
親権者(父母)が自己破産していた場合、お子さんに影響があるとすれば、自己破産した親権者の名義では学資ローンは組めない、奨学金の保証人や連帯保証人にはなれないことです。
奨学金の審査では親の信用情報を照会することはありませんが、奨学金を受ける際には連帯保証人と保証人が必要となりますが、自己破産した方(債務整理中の方)は保証人、連帯保証人にはなれません。
奨学金(JASSO)の「人的保証制度」には連帯保証人、保証人となる方は「債務整理中(破産等)でないこと。」とあります
引用元:JASSO 人的保証制度より
奨学金における連帯保証人は原則父母となるため、父親が自己破産している場合は母親が連帯保証人となれば問題はありません。
しかし、連帯保証人や保証人になるためにはJASSOの定める「返還を確実に保証できる人」の基準等を満たす必要があります。
親権者(父母等)が基準を満たせない、連帯保証人を立てることができない場合であれば、「人的保証制度」ではなく「機関保証制度」を利用する方法もあります。
「機関保証制度」を利用すれば、保証料はかかりますが、連帯保証人や保証人なしでも奨学金を受けられます。
就職や進学には原則影響しない
お子さんの進学や就職には直接的に影響しません。
お子さん名義でローンやクレジットカードを利用する場合、親権者の自己破産は影響しないため、原則利用できます。
また稀なケースとして、結婚相手の親が自己破産にネガティブなイメージ持っており、身辺調査された場合など、影響する可能性はゼロではありません。
自己破産してもローンやクレジットカードは利用できるようになる
自己破産した後、一定期間を経過することでローンやクレジットカードは再び利用できるようになります。
自己破産すると信用情報機関に保管される信用情報に事故情報として登録されますが、5年〜10年経てば、自己破産に関する事故情報が削除されるためです。
信用情報機関 | 自己破産の場合 |
---|---|
CIC | 5年以内 |
JICC | 5年以内 |
全国銀行個人信用情報センター | 10年 |
信用情報から事故情報が削除されれば、ローンやクレジットカードの審査において、信用情報が原因で落とされる可能性は低くなります。
まとめ
自己破産していることを隠したまま結婚しようか悩んでいる方には、自己破産していたことは結婚前に相手に伝えることをお勧めしています。
なぜなら、結婚後に自己破産したことが発覚した時、夫婦間の信頼関係に支障をきたすだけでなく、自己破産によるリスクやデメリットによる影響があるためです。
例えば、ローンやクレジットカードは自己破産後、5年間〜10年間は利用できなくなります。住宅ローンやマイカーローンだけでなく、お子さんの学資ローンも組めなくなりますし、奨学金の連帯保証人や保証人にもなれません。
家族の将来を考えた上でも自己破産している事実を結婚相手に伝え、自己破産のリスクやデメリットを理解してもらった上で結婚後のライフプランをどうするのか?夫婦間で話し合うことをお伝えしています。